カスタマー・ジャーニーにおけるアプリの役割

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こんにちは、MGRe分析機能(Insight)のプロダクトマネージャーを担当している猿渡(さわたり)です。

今回はアプリを使ったマーケティングについて書きたいと思います。 近年、インターネットの急速な普及に伴ってマーケティングで利用するチャネルが急速に増えています。 昔なら、

  • テレビ
  • ラジオ
  • 新聞、雑誌
  • 街中で見かける広告

といったチャネルを使って企業から製品のコンセプト等を伝えていました。最近では、

といったデジタルチャネルがどんどん加わっています。 さらにデジタルチャネルはテレビやラジオと違ってユーザー起点の発信が可能となっていることが多いので、企業・ユーザー双方向からのコミュニケーションが行われ意思疎通の経路が無限にあるようにさえ感じます。SNSだけでも結構な数があるので、世の中のマーケッターはどのチャネルにどのくらいのコスト・リソースを割けばいいのか暗中模索することも多いのではないでしょうか。この点については過去よりも複雑性がかなり上がっていると思います。

さて、MGReはこれらのチャネルの中の一つである『アプリ』を扱うことになるのですが、アプリが活躍するのはどういった場面なのでしょうか?フィリップ・コトラーが提唱するカスタマー・ジャーニーのフレームワーク『5A』に当てはめながら考えてみたいと思います。

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コトラーが『マーケティング4.0』の著書を出したのが2012年でこの時80歳を超えていたそうです。その後もご活躍されていて、老いを全く感じさせないとんでもない人ですね)

MGReのクライアントはアパレルを中心とした小売業が多いのですが、アプリをインストールして使い始めるのは基本的には購入時のレジ前です。そうすると5Aの右から2番目『行動』のタイミングでアプリが関わってくることになります。これはつまり、アプリは購買後から再購入のフェーズで使われることがメインとなって、これまで商品を買ったことがない人に対してはあまり機能しないチャネルということになります(確かに通常は購入するか迷っている段階でアプリをインストールしませんよね)。

一方で購買後から再購入のフェーズではアプリは積極的に使われることが多くなります。ユーザーにとっては、

  • 会員証カードの代替として利用する(財布でカードを持ち運ばなくて良い)
  • 効率性のあるセルフサービスを利用できる(会員情報の更新、決済手段の組込みなど)
  • 電子クーポンを受け取れる

といった点でメリットがあり、企業側にとってもユーザーの利便性を挙げつつオウンドメディアとしてチャネルを追加できるため普及が進んでいます。

アプリが『行動』段階で使われるということは、次の段階はもう『推奨』しかありません。したがって『推奨』へとユーザーを移行させるところでアプリに活躍してもらい、なるべくユーザーとの良好な関係を維持するのに役立ってもらいたいという期待値になります。もしこの視点で効果測定をするのであれば再購入率やロイヤルティ向上がKPIになると思います。

またコトラーは、オンラインとオフラインを交えてオムニチャネルに一貫性を持たせることを強く推奨しています。これは複数のチャネルで最適なタッチポイントを構成し、統合されたデータを持ってユーザーに適切なサービスを提供していく必要があるということで、アプリもあくまでチャネルの一つに過ぎないので他チャネルと連携していくことになります。

例えばアプリに固有の機能としてプッシュ配信がありますが、プッシュ配信への反応を集計すると利用頻度や購入頻度の高いヘビーユーザーほど反応率が高くなっています。アプリを開けばお知らせなどのコンテンツも閲覧してもらえるのでヘビーユーザーへはいろいろと情報を提供し易いです。逆にあまりアプリを使わない(プッシュ配信を非通知にしてあまりアプリを起動しない)ユーザー群へはアプローチが届きにくく、せっかく配布したクーポンも存在を知らずに素通りしてしまうことも多く見られます。つまり、ライトユーザーの場合にはアプリ以外のチャネルによるアプローチが有効なケースもあり得そうです。この辺りのチャネルの組み合わせはシステム統合や他部署との役割分担等を含む構造設計の難しさが絡んで、どの企業も苦労している印象があります。

なお潜在的なライトユーザーでも新規でアプリをインストールしたタイミングや購入時には情報提供のチャンスがあるので、そこを上手く活用する余地はあると思っています。ただユーザーがアプリに集中して閲覧する時間は限られているので、短い時間で成果を出すことが難しいなとも感じています。

まとめますと以下です。

  • アプリが活躍するのは購入時以降の局面なので、再購入やロイヤルティの向上を目指していくチャネルになる
  • アプリでは主要セグメントであるヘビーユーザーへアプローチが通り易い
  • アプリ以外のチャネルとも連携することでタッチポイントの柔軟性が広がるが、最適なチャネルの配置は結構難易度が高い

今後もより分析を進めながら一つのタッチポイントとしてのアプリをどう成長させていくべきか熟考し、ブログで皆様に共有していきたいと思います。